火山活動に河川の浸食など、平地の少ない鹿児島では多様な自然地形を見る事が出来ます。その中でもとりわけ市街地から比較的近い場所に多いのが滝です。鹿児島県内では有名な物に加治木の龍門滝や南大隅の雄川の滝などがありますが、それ以外にも様々な場所に小規模な物から大規模な物まで点在しています。
今回ご紹介するのは、鹿児島市内からも比較的近い場所にある久木田の滝(通称:ふずん滝)です。
久木田の滝の概要
- 所在地:鹿児島県鹿児島市 犬迫町 久木田(犬迫川沿い)
- 落差:推定3~10m(※滝は複数段有)
- 現況:新しい遊歩道を整備中(※2025年2月現在)。三段目の滝への旧道は通行可能
- 備考:現在駐車場等はありません。また一部遊歩道は老朽化が進んでおり大変危険です
久木田の滝の風景

ふずん滝は鹿児島市を流れる犬迫川の滝で、甲突川との合流部から約1.5km程の場所に存在しています。滝の構造としては複数段から成っており、上流から数えて四段目にあたる滝が一番落差が大きなものになっています。
ただし現在三段目以外の滝は遊歩道の老朽化や荒れ方が酷く容易に立ち入る事は出来ません。

三段目の滝の滝つぼ付近には小さな岩屋があり、中には山神様が鎮座しておられます。
※位置的に最初は水神様かと思いましたが、現地の看板からここでは山神様と記載します。

現在三段目の滝へと向かう遊歩道を新設工事中でした。
写真撮影時は迂回する旧道を利用し三段目の滝まで向かいましたが、この新設路では道が大幅に短縮されます。
なお、新設路工事中も従来の旧道を使ってのアクセスが可能です。
発電所として利用された久木田の滝
風景だけを見るとただの滝である久木田の滝ですが、実は過去水力発電所の動力源として利用されていた過去があります。
時は遡る事大正時代後期。当時既に甲突川では明治31年(1898年)に九州最初の水力発電所として小山田発電所が設置されており、市街地では鹿児島電気軌道(※現・鹿児島市交通局)によってその電力を使用した電車を走らせていました。
その様子を見て、地域の発展への電力の必要性を募らせた人物がいました。当時犬迫産業組合で長を務めていた稲葉 三次郎という人物です。この人物は後に伊敷村長へとなっています。

稲葉は町の発展に電力は必須と捉え、久木田の滝の落差を利用した水力発電所を建設。無事に完成させると送電を開始し、運用は大正12年(1923年)から昭和29年(1954年)までの間行われました。
その事を示すように、1930年代の旧版地図ではこの滝の場所に発電所と送電線の地図記号を確認出来ます。
発電所が廃止された理由は定かではありませんが、発電所の設置当初と比べ電力が一般化し始めた事や高度経済成長期に差し掛かり始めた点があるかもしれません。
おわりに
鹿児島市には沢山の滝があり、その中には今回のように特別な歴史を持つものもあります。一般に開放されている滝は数えるほどに留まりますが、自然を楽しむと同時にそれを活用しようとした先人の営みにも目を向けていただけますと幸いです。

余談だが、この久木田の滝に水力発電所を設置するにあたって隣の小野町の番屋地区に町有林を購入したそうだ。どうやらそこの木を電柱用にしたそうだぜ。
今この場所には北部清掃工場が作られ、残念ながらかつての姿はもう見る事は出来ない…
参考資料
平成29年3月1日 『つなごう伊敷の和 伊敷地域ガイドブック』- 伊敷地域まちづくりワークショップ